アメリカ行 その10

NPT

コロンビア川からハンフォード核施設を見学(つづき)
核施設一帯に接する50マイル(80キロ)ほどのこの地域は「ハンフォード・リーチ」と呼ばれ、川幅は広いのですが非常に浅くなっており、鮭の産卵地になっています。太平洋からさかのぼってきたキングサーモンの80%がこのあたりで産卵するそうです。鮭の赤ちゃんは6~8週間で海へ下っていくので放射性は帯びていませんが、底に沈殿した水銀などの化学物質は吸収しているだろうとのことでした。また、鮭のように長距離の移動をしないバスやマスなどの魚を調べたところ、100匹集めたサンプルのほとんどからプルトニウム、セシウム、ストロンチウムなどの放射性物質が検出されたそうです。川底に沈殿したものや、地下水から流れ出たものが魚の体内に蓄積されたのです。ボートで移動する際に、反対岸に別荘のようなものがいくつか見え、桟橋も出ていました。釣り人を乗せたボートにもすれ違いました。また、この流域に住む先住民は毎日のようにこの川の魚を食べています。そういった人々への影響も心配されています。
3時間ほど川をさかのぼったところで、左の写真にあるN原子炉が見えてきました(9つある原子炉にはすべてアルファベットの名前が付けられています)。このあたりの地下水からは、飲料水の9000万倍のストロンチウム90が検出されました。両岸に草原が広がっていますが、野生の桑の木がたくさん生えており、これらは地下水から水をくみ上げています。そのため、桑の木を調べると地下水の汚染度がわかるそうです。カーペンターさんは、GAPのスタッフのノーマン・バスキーさんと一緒に、ここの桑の木で作ったジャムを政府に送ったそうです。怒った政府は裁判を起こしましたが、カーペンターさんらが勝訴したそうです。その後、政府は桑の木を全部伐採したりして悪あがきをしているようですが、桑は今でも生えています。
12時30分にホテル裏の桟橋に戻りました。天気が良く、日光浴やジョギングをしている何人かの人とすれ違いました。カモメが気持ちよさそうに飛んでいました。ここだけ見ると普通のアメリカの田舎町のようでした。長時間ボートの風に当たっていた私たちは、寒さに震えながらお弁当を手にシアトル行きのバスに乗り込みました。

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